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from Germany, 旅が好き、本が好き。

北欧旅行6日目~スウェーデン『森の墓地』で本と旅の不思議を思う~

スウェーデン最終日、ストックホルム中心部から少し離れますが、どうしても行きたかった場所へ。
離れるとはいえ、交通機関乗り放題のトラベルカード圏内です。
グリーンラインに乗って約15分、スコーグスシュルコゴーデンが今日の舞台です。

駅を出るとすぐ楡の木のトンネルが続いています。

これから足を踏み入れる不思議な空間に、ふさわしい道。

 
約10分歩くと、不意に広々とした緑が視界に入ってきます。
広大なこの場所こそが、『森の墓地』。

その名のとおりここは墓地。
100ヘクタールもの森の中には、12万におよぶ魂が静かに眠っています。

1917年から、実に25年近くもかけて作られた森の墓地は、1940年に一応の完成を見ます。
しかし、現在に至るまでゆるやかに手が加えられ、いつの時代も森とともに自然な姿で佇んでいるのです。

この墓地は、エリック・グンナール・アスプルンドシーグルド・レヴェレンツによる共同設計。
アスプルンドといえば、アルヴァ・アァルトやアルネ・ヤコブセンら北欧を代表する建築家に影響を与えた人物。
スウェーデン1日目に訪ねた、360度本に囲まれたストックホルム市立図書館を設計したのも彼です。

建築やデザインに関しては、好きではありますが明るくはないので多くは語れません。
けれど、図書館にしても墓地にしても、彼の建築物から何か思うところがある。
たとえば、雑誌か何かで一瞬目にしただけの写真が頭のどこかにずっと残っている。
今となってはいつどこで見たのかも覚えていませんが、市立図書館はまさにその例。
あのぐるっと囲まれた図書館に、いつか行ってみたいと思い続けていました。

一方、『森の墓地』に関しては、元々何かで見たわけではありません。
スウェーデンに行くことが決まってから、良いスポットはないかと探していたら見つけました。

1994年に、20世紀に造られた建築物として初めて世界遺産に登録されたらしいこと。
死者は森へ還る』というスウェーデンの死生観に、どこか魅せられたこと。

訪れてみたい理由はいくつかありましたが、最後にひとつ。
これは、スコーグスシュルコゴーデンへ向かう電車の中で偶然たどり着いた情報だったのですが、私の中では最も納得する理由となりました。

それは、ある本の中で重要な場所として描かれていたのが、この『森の墓地』だったのです。

重松清さんの、「十字架」。

重松清 (著)

タイトルもそのものずばり、なのですが、事前に調べている時は全く思い浮かんでいませんでした。

それなのに、この本に出てきていたのが『森の墓地』だと分かってからは、自分はこの本に導かれてここに来たんだ、としか思えなくなりました。
 
私が読んだのは5年以上前ですが、教育や社会を厳しく鋭く、痛くて苦しいほどまっすぐに切り取る重松清さんの作品らしく、考えさせられる物語です。
その重苦しいとすら感じる物語の中で、『森の墓地』は一筋の光のような、救いの地のような、そんな場所のように見えたことを思い出しました。
当時はスウェーデンという場所は私にとって非現実的な遠さで、『森の墓地』へ自分が行くことになるなんて考えもせず、実在するのかどうかも分からないような場所としてとらえていました。
 
こうして、その地に立つ日が来るなんて、本と旅の不思議、可能性にひれ伏したいような気持ちです。
自分の思考の範疇を軽々と越えて、これまでの人生の数々の点を、ある時ふと結んでくれる。
私にとって、本も旅も、そんな存在なのです。

この瞬間があるから、どちらもやめられない。


圧倒的なスケールながらもどこか温かい十字架。森の緑と空の青がそう見せているのでしょうか。

この世ではないかのような、美しく神秘的な風景。

建築物も、森と調和しています。

一本道の両側には、数えきれないほどの墓石が。
墓地というと、何となく怖いイメージがありましたが、全くそんなことはありません。
 
お別れをすること、もう見えないこと、触れないこと。
それは残された者にとってはこの上ない喪失感をもたらすことです。
 
でも、こんなにも穏やかで温かい場所にいる魂たちは、きっと寂しくないだろうな、みんな一緒にいるだろうな。
そしてここからみんな見てくれているのなら、なんだか歩いていけるような、少し許されるような、そんな気がしたのでした。
 
ここは、魂を森へ還す場所であり、生きていく者が前を向いていくための場所。
生と死は正反対なようでいて隣り合わせ。
両方とも、命あるものが必ず通る道であり、それは一本の同じ道の上にある。
 
決して深刻になりすぎず自然に、けれど真剣に、いろいろなことを思う時間も旅の醍醐味です。
 
シナモンロールとコーヒーで、軽い昼食。
食べることは生きること、という言葉が頭をよぎります。
 
最後に見つけた、地面から直接生えていた一輪の真っ赤なバラ。
幻想的なこの場所によく似合っていました。
 

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